来夏の調査では限られた時間内にかなりスピーディに作業を行わなければならないため、遺構や遺物分布を記録する際に、従来の手書きスケッチは行わず、写真撮影による三次元測量という新技術を導入することに決めました。データ処理にはAgisoft社のPhotoScan Professional Editionを使用します。現場ではたくさんの写真を撮影するだけで、三次元モデルの作成はすべてソフトが自動でやってくれるのでとても楽チンです。これにより大幅に時間短縮が可能になるだけでなく、手書きスケッチよりも正確な記録が可能になります。
今日はそのPhotoScanを使ってモチェの鐙型土器(レプリカ)の三次元モデルを作ってみました。一眼レフをアメリカに置いてきてしまったので、写真はiPadで撮りました。遺構と違って、遺物の三次元モデルは元の写真をマスキングをしないといけないので結構手間がかかります。朝一で写真撮影をし、ユーザーマニュアルを見ながら作業して、昼飯前までかかりました。写真を全方向から上手に(オーバーラップを考えて)撮らないと穴あきモデルになってしまいます。まだ使い始めたばかりですが、少しだけコツが掴めたように思います。
GoProによる動画撮影と同様、調査までにしっかりと操作方法をマスターしないとけません。
※プロジェクトのFacebookページには画像をアップロードしています。https://www.facebook.com/LambayequeComplexAP/posts/381860382009922
外国籍の考古学者がペルーで発掘をするためには、プロジェクト内にペルー人共同ディレクターを置かなくてはいけないという決まりがあります。ここ数週間、そのための候補者を探っていましたが、数名の候補者の中で、運良く以前からよく知っている人と条件面(調査期間および給与)で折り合いがつき、本日合意に達しました。
Lurica Hayakawa(ルリカ・ハヤカワ)さんという方で、リマ在住の考古学者です。お名前から分かるように日系人ですが、日本語は一切話せません(笑)。彼女の他にもペルー人学生やアメリカ人学生を何名か迎え入れる予定ですので、日本から参加の発掘クルーは最低限の会話ができるくらいのスペイン語・英語習得が必要です。まだだいぶ時間がありますので、勉強頑張りましょう。
先日、リターン品の一つである考古学ムービーの製作用にビデオカメラを購入しました。完全防水・防塵なだけでなく、4K動画が撮れる優れものです。これを発掘者の頭部に装着して、考古学者視点の映像を撮ります。また、ドローンに取り付ければ、簡易的ではありますが、空撮からの三次元測量も可能になります。ただ、使いこなせるようになるには色々と慣れが必要なようで、日々試行錯誤を重ねています。そのうちテスト動画をFacebookページ(https://www.facebook.com/LambayequeComplexAP)にアップしたいと思います。
本日、皆様からの支援金の振込みを確認致しました。ありがとうございます。大切に使わせて頂きます。円安が進んでいますが、来年の夏前までに振り戻しがあることを祈っています。ベストなタイミングを狙って米ドルに換金します。
先日新橋にて、来年の発掘調査に参加するメンバーと顔合わせを兼ねたミーティングを行いました。とてもユニークなメンバーが揃いました。そして幸いなことに、みなさんとても人懐っこい。初めて顔を合わせたとは思えないほどお互いに打ち解けることが出来、これは良いチームになると確信が持てました。調査開始までの1年弱の間に少しずつ結束を高め、ベストなチームを作り上げたいと思います。
調査支援者の皆様へ
ニュースなどですでにお見知りおきかもしれませんが、今年は約17年ぶりに(1998年以来)非常に大きなエル・ニーニョが来ており、南米各地で異常気象が記録されています。私たちの調査地域を含むペルーやチリ北部では、大雨とそれに伴う川の増水や氾濫、地滑りなどが大きな問題となっています。現地の状況を鑑みた結果、以下にご説明しますように、調査をしばらく延期せざるを得ないと判断致しました。皆様からは「今夏に発掘調査を行う」ということでご支援を賜ったため、スケジュールの見直しについて皆様のご理解をいただくため、ご連絡させていただいた次第です。
エル・ニーニョとは、「エル・ニーニョ南方振動(El Nino Southern Oscillation)」の略で、英語では頭文字をとってENSOと呼ばれることもあります。簡単に説明しますと、太平洋上の大気と海水の温度の上昇によって引き起こされる気象現象のことです。毎年クリスマス近くに、暖かくなった太平洋の海水が通常の流れとは逆流し、赤道に沿ってペルー沖に流れ込んできます(エル・ニーニョとはスペイン語で「赤ちゃんキリスト」を意味します)。この暖流の流入によって、普段はペルー沿岸を北上している寒流のフンボルト海流が押し戻される形になり、その度合いが大きければ大きいほど、さまざまな異常気象を引き起こします。海流の流れが大きく変わると、それに応じて生態系がガラリと変わるため、さまざまな生き物が死滅したり、寒流のせいでいつもは乾燥してほとんど雨が降らない海岸地帯で大雨が降ったり、その結果洪水が起きたりします。今回のエル・ニーニョはその変化の度合いが非常に大きく、各地で環境問題が多発しています。
これまでのニュースによれば、(普段は干上がっている)シカン遺跡のすぐ脇を流れるラ・レチェ川が増水し、氾濫の恐れがあるとのことでした。川が氾濫すれば発掘予定地が水浸しになることは必至です。すでに文化省の地域ディレクターが、ランバイェケ県の民間防衛対策本部当局に対して、今後起こりうる氾濫による遺跡の神殿群の浸食被害を防ぐため、大規模な防衛対策を要請しています。さらに先日(私たちの発掘調査の拠点となる)国立シカン博物館で遺物分析をしている友人と話し、調査地の現状に関して詳しい情報を得ることができたのですが、彼女の話によれば、川幅も日増しに広がっていて、去年の11月頃からすでに徒歩で渡ることができなくなっているそうです。したがって、問題となるのは遺跡へのアクセスです。宿舎を設営予定のフェレニャフェ(Ferreñafe)の町は増水しているラ・レチェ川の南側、シカン遺跡の対岸にあります。川の増水により、遺跡へは大きく迂回してイジモ(Illimo)あたりまで海岸方面へ出てから川を渡り、そこから内陸へ戻るというルートしかなく、通常ならフェレニャフェから片道30分程度で到着できるところが二時間弱かかるそうです。毎日四時間近くを移動だけに費やすのはとても非効率で、五週間という短い調査にとっては手痛い時間ロスとなります。経費が増すという点でも好ましくありません。現地情報によれば、しばらくは川の水量が減ることはないそうです。したがって、今夏の発掘はあまり現実的ではなく、少なくとも徒歩で渡れるくらいまで川の水量が減るのを待たなければなりません。
では、具体的にいつまで待てば良いのかということになります。
一つの可能性としては北半球の冬(12~1月)、ペルーの夏です。うまくいけば水量は減っているかもしれません。あまり時期を置かずに調査に入れるのは良いのですが、夏のペルーはとても暑く、蚊や蜂、ハエなどの虫も多いので、野外作業には不向きです。去年の1月にフェレニャフェに行ったときは、屋内作業にもかかわらず一日100箇所近く蚊に刺されました。これまでにマラリア(蚊を媒体に感染)にかかったという例は聞いたことがありませんが、完全にないとも言えず、不安要素の一つとなります。もう一つの可能性は来年の初夏(5~6月)、ペルーの初冬です。その頃までには水量は間違いなく減っているでしょう。予定していた時期からはだいぶ開いてしまいますが、通常なら冬は乾燥していて、気温も比較的過ごしやすいです(それでも晴れの日は30度近くまで上がります)。また、現在申請準備中の別の研究費が使える可能性があるので、その場合には五週間という限られた短い時間ではなく、調査期間を倍以上に延長できることも好都合です(5~7月)。
以上を考慮しますと、来年初夏までの延期がもっとも現実的ということになります。
考古学発掘にはこういった不測の事態がつきもので、特に自然災害などの場合は私たちにはどうすることもできず、ただ黙って現状を受け入れるしかありません。今回の延期によって、「より長い時間を準備に充てられる」と前向きに捉えるべきだと、自分に言い聞かせております。皆様には、当初提案させていただきましたスケジュールから10ヶ月強の延期となり、大変長らくお待たせしてしまうことを深くお詫び申し上げます。お詫びのしるしとして、webinar(ウェブを利用したオンラインセミナーのようなもの)を開催し、皆様をご招待することを検討しております。詳細については追ってご連絡申し上げますので、しばらくお待ち下さい。なお、延期期間中においても、プロジェクトの進捗状況をアカデミスト・ウェブサイトおよびプロジェクトのFacebookページ(https://www.facebook.com/LambayequeComplexAP?pnref=story)にてお知らせしますので、随時ご確認下さい。
以上、ご理解のほど宜しくお願い致します。
松本 剛
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