academistスタッフからの一言
前回に引き続き、ROVを用いた沈没船調査に乗り出したラ・プロンジェ深海工学会の浦環(うら・たまき)博士。ロボット開発歴35年の浦博士は、今年8月に東シナ海に沈む客船「大洋丸」を求めて調査を進めます。academist では初めての事例となる2回目のクラウドファンディングです。バイタリティあふれる浦博士の活動に、ぜひご声援をお願いします。
担当者:柴藤亮介
2017年に「伊58呂50特定プロジェクト」を行い、五島列島沖合に海没処分された24艦の潜水艦の特定に成功しました。そのニュースを読んだ方から、「東シナ海に沈む『大洋丸』を発見できないものだろうか」というご要望を受けました。
これをきっかけに戦時徴用船を調べていくうち、沈没した戦時徴用船のなかでも「大洋丸」は非常に大きな存在であることを知りました。その後、海上保安庁海洋情報部からのデータを得て、「大洋丸」が沈んだとされている位置の周囲に5隻の沈没船(下図:大1〜大5)があることがわかりました。
そこで、これら5隻に遠隔操縦式の無人潜水機(ROV)を潜らせ、船名を確認するプロジェクトを開始します。5隻は、いろいろな情報を集めると「大洋丸」「りま丸」「富生丸」「錫蘭丸」ではないかと思われます。プロジェクトでは、ROVの調査によって船名を確認し、これら沈没船の位置と現状を明らかにします。歴史的にも、犠牲者の鎮魂のためにも大切なことであると考えています。
海の底へと落ちていったものは、たいてい、そのまま放置され、忘れ去られていきます。しかし、そうした時代はもう終わりです。新たな海中技術を使って、その位置を特定し、状況を観測し、必要があれば引き上げることのできる時代になったのです。海上保安庁海洋情報部は、マルチビームソナーを使って水平分解能が数メートルの東シナ海の地形図を作っています。そしてそこに、沈没船を発見しています。次の段階は、それがどの船で、現状はどうなっているのかを明らかにすることです。それにより「大洋丸」と関係する物語を掘り起こしましょう。
海上保安庁海洋情報部は、海底地形を計測するために調査を行っています。そして、東シナ海の大陸棚のように浅い(200m以下)海では、調査で得られた地形図のなかに沈没船を見いだすことができます。しかし、沈没船を発見することは海上保安庁の調査の目的ではありませんので、それが何なのかを調べるところまでは行われません。沈没船の特定は、私たち民間人が私財を投じてやるしか道がないのです。大洋丸と他の4隻の船を特定することに意義を感じる方々のご支援とご協力がなければ、それらの船は忘れ去られてしまいます。
調査主体は、一般社団法人ラ・プロンジェ深海工学会で、メンバーはすべてボランディアです。海洋調査は船を使わなければできませんが、用船料として1日数百万円を要します。そこで今回、調査船経費をまかなうためにクラウドファンディングに挑戦します。調査は、8月末までに終了する予定です。ご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
浦環(URA TAMAKI)と申します。私は35年にわたって自律型海中ロボット開発を行い、海中技術を発展させてきました。戦後73年、ようやく技術レベルが上がり、200m水深の海底に鎮座する沈没船を莫大な経費をかけずに調査できるようになりました。現在の技術を最適なやり方で使い、目的を果たしたいと思います。
以下のスケジュールで研究を進めていきます。
2018年07月26日 | クラウドファンディング開始 |
2018年08月22日 | 大洋丸調査開始予定(海況による) |
2018年08月25日 | 大洋丸調査終了予定(海況による) |
2018年08月31日 | クラウドファンディング終了 |
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