academistスタッフからの一言
ガンは人間だけではなく、イヌにも発症する病気です。イヌのガンは人間に比べると研究が遅れており、そもそもガンが遺伝するのかどうかすら、未だ明らかにされていません。今回、山口大学研究推進体TRACの研究チームは、雌犬に発生する確率の高い「乳ガン」に注目し、乳がん発症メカニズムを解明することを目指します。臨床腫瘍学、薬理学、外科学、細胞生物学、放射線学の異なる専門家が集うチームに、イヌのガンの研究を託してみませんか。ぜひプロジェクトページをご一読のうえ、応援よろしくお願いします!
担当者:柴藤亮介
イヌのガンは、高齢のイヌにおいて多く認められる疾患であり、10歳以上の半数がガンでなくなるといわれています。イヌの寿命が年々延長していることに伴い、ガンを患うイヌが動物病院に来院する数は増加する一方で、ペットのオーナーは家族の一員であるペットに対して、より高度な医療を望んでいるという現実があります。
イヌのガンに対する診断および治療は、人のガン患者のそれらに準ずるところが大きく、とくに治療に関しては、外科治療、放射線治療、抗がん剤治療など同じように実施されています。
しかし、イヌのガンがどのように生じるのか、ガンが遺伝するのかどうか、そしてガンのリスクを予測できるのかどうかなどについては、ほとんど研究されていません。また、個々のガンのイヌにおける遺伝子の異常などから、それぞれの状況に準じた新しい治療法を開発するというようなアプローチもほとんど実施されておらず、医療に大きな遅れをとっているのも事実です。
雌犬に生じる腫瘍で最も発生率の高いガンは、乳ガンです。大部分が、ホルモンが細胞の増殖に影響を与えることで生じるため、早期に不妊手術をすればその発生率を下げることができるのですが、1歳齢以降なるど、不妊手術をしても発症率に影響しないことも知られています。
このように、イヌの乳がんは根本的にはホルモンが原因で生じるわけですが、遺伝的要素についてはほとんど研究されておらず、その重要性も明らかになっていません。また、イヌの家族性のガンの発生については、乳ガン以外の種類のガンについてもほとんど研究されていないのです。
発生率が高いイヌの家系をみつけました。私たちは、この家系のイヌには乳ガンになりやすくなる遺伝子異常があり、それらがあるために通常より乳ガンになりやすいという仮説を立てています。
この仮説を検証するために、家族性乳ガンのイヌから抽出したDNAを次世代シークエンサーによって全遺伝子配列を明らかにし、どういう遺伝子異常がこの家系のイヌの乳ガンを起こしやすくしているかということを明らかにしていきたいと考えています。また、同じ犬種で乳ガンになっていないイヌのDNAも同様に解析することにより、家族性乳ガンのイヌにおいて遺伝子の異常を明らかにします。そうすることで、イヌの乳ガンの発症に関わる遺伝子異常を明らかにします。
また場合によっては、この遺伝子異常をもっている個体は乳ガンになりやすいということまで明らかにできる可能性があるのではないかと考えています。将来的には、この遺伝子異常に対してなんらかの対策をすることで、イヌの乳ガンの発生率を下げていくことを目指します。
すでに解析するDNAはあるのですが、次世代シークエンサーによるDNA配列決定の企業への外注費が150万円、得られた情報の確認実験に50万円、合計200万円の費用が必要です。
私たちのグループのメンバーは、それぞれ自分自身の研究プロジェクトを自分の研究費で実施しているのですが、今回新たにこの家族性乳ガンの解析を実施するのに、それら研究費を流用することはできません。そこで今回、皆さまからのご支援をいただくことで、イヌの乳がンの発症メカニズムを明らかにし、それによってイヌの乳ガンの発症を減らし、さらには新しい治療の開発につなげたいと思っております。
イヌのガンについてその遺伝子の異常を解析することは、より高度な診断や治療などをイヌに対して実施するという点において非常に重要であり、多くのペットのオーナーが望んでいることでもあります。みなさまのご支援をいただくことで、最初の一歩を踏み出すことができればと考えております。ご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
はじめまして。我々は、山口大学認定の研究推進体「小動物のがんに対するトランスレーショナル研究治療ユニット」という名前の研究チームです。山口大学の共同獣医学部の教員6名からなる組織です。メンバーは、それぞれ臨床腫瘍学、薬理学、外科学、細胞生物学、放射線学の専門家が集まっており、様々な異なる研究テーマについて研究を行なっていますが、この研究推進体では、主にイヌのガンに対する新しい治療法を開発し、臨床応用を行うことを目的に、異なる角度から新しいものを生み出す研究組織を作りました。
以下のスケジュールで研究を進めていきます。
2018年04月 | クラウドファンディング挑戦 |
2018年07月 | 実験開始 |
2019年04月 | 論文執筆(〜2019年9月) |
2019年09月 | 学会発表@日本獣医学会 |
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