academistスタッフからの一言
理学療法士としてパーキンソン病患者さんの家族に接するなかで、仕事の傍ら研究活動を進めていくことを決めた山梨大学大学院・長坂和樹さん。長坂さんが取り組む研究テーマは、VRを用いてパーキンソン病のリハビリテーションを行うというものです。実現までに越えるべきハードルは多々あるものの、一つひとつ確実に乗り越えていきたいと、長坂さんは力強く語ります。若手研究者が挑む新たな試みに、ぜひご声援をお願いいたします。
担当者:柴藤亮介
パーキンソン病は進行性の神経変性疾患で、日本には約15万人の患者さんがいると考えられています。パーキンソン病の患者さんには、手の震え、筋肉が硬くなる、動きが無くなる、転びやすくなるといったような症状が認められ、なかでも転倒による骨折や疼痛のため歩行に恐怖を感じてしまうことで、日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)が低下してしまうことが問題となっています。
私は、母がパーキンソン病を患ったことがきっかけでリハビリの道に進みました。家族の立場になって同じ境遇で悩んでいる方の支えになれればと考えたからです。現在、パーキンソン病は原因不明の進行難病ですが、継続的なリハビリテーションをすることで、進行を遅らせる効果があるといわれています。
理学療法士としてリハビリの臨床経験を積むなかで、パーキンソン病患者の家族の不安や悩みは非常に大きいということを実感しました。そこで昨年、私はパーキンソン病患者の運動交流サロンとして「PDサロン」を立ち上げました。
パーキンソン病患者の転倒の原因は、小刻み歩行やすくみ足によるものです。したがってPDサロンでは、掛け声や床に引いた等間隔の線を手がかりに動作をすることで、症状の改善を図っていきます。しかし、患者さんにとって、無意識下でこれらの動作を行うことは非常に難しいといえます。
パーキンソン病のリハビリには上記のもの以外にもいくつか方法が提唱されていますが、視覚からの情報を実際の動作に反映させながら行う方法は、多くありません。そこで私は、近年急速に進化を遂げているVR技術を利用することで、無意識の動作に対して臨場感や没入感といった視覚からのフィードバックを与えられるようなリハビリ手法を研究しています。
現在研究している手法は、理想的な動作を360°カメラを用いて動画として撮影し、これをVRの動画として患者さんに視聴してもらいながらリハビリを行うというものです。これにより、歩行率やパーキンソン病の症状がどう変化していくかを調べていきたいと考えています。研究では、PDサロンの参加者やリハビリ施設利用者に協力していただき、このVR技術を用いたリハビリテーション手法の有効性を検証していきます。
実験では、4Kタイプの360°カメラと編集用パソコン、VR専用ゴーグルの外注費が必要になりますが、現在その費用が足りていない状況です。そこで、今回クラウドファンディングにチャレンジすることにしました。
VR技術がパーキンソン病のリハビリの新たな切り口になるよう、継続的に研究を進めていきたいと考えています。また、VR編集技術を専門とする共同研究者も募集していますので、ご興味のある方はぜひご連絡ください。みなさんのご支援をお待ちしております。
はじめまして。長坂和樹(NAGASAKA Kazuki)と申します。リハビリテーションの価値観を大切にしながら、介護保険下での通所サービスを運営しております。臨床経験8年目の理学療法士です。神経難病分野を得意とし、特にパーキンソン病のリハビリテーションの研究活動を行っています。昨年、パーキンソン病の運動交流サロンを立ち上げ、2017年4月からは、山梨大学大学院神経内科講座にてパーキンソン病のリハビリテーションをテーマに研究を行っております。
以下のスケジュールで研究を進めていきます。
2018年1月 | クラウドファンディング挑戦 |
2018年04月 | 実験開始 |
2018年12月 | 学会発表@日本動物学会 |
2019年2月 | 論文執筆(〜2018年5月) |
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