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人とAIが健全な関係性を築くために、技術と社会の両軸を横断したい

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SUCCESS
中尾悠里
株式会社富士通研究所、研究員
支援総額: 1,529,719 円
目標金額: 830,000 円
達成率
184 %
サポーター
156
残り時間
終了
募集期間は終了しました

目標金額を達成しました!

ご支援いただいた皆様・情報のシェアにご協力くださった皆様

おかげさまで、開始後三日という信じられないスピードで、目標金額を達成することができました。これも、研究ビジョンに共感してくださる皆様のおかげです。頂いたコメントと共に、多くの方からご支援いただいているという事実に、勇気を頂くと同時に、身が引き締まる思いでおります。私企業の研究所に勤める傍らこうした社会学的な研究を行うことに対して、クラウドファンディングという形でこれほどまでにご支援いただけるかどうかは実際に始めるまで分かりませんでした。ここまでご支援くださった74名の皆様、本当にありがとうございました。コメントへの返信が追い付いておりませんが、全て読ませていただいております。後ほど一つずつ返信させていただきます。

目標金額として、本クラウドファンディングのゴールの一つである書籍の刊行に必要な額の半分である83万円を設定させていただいておりました。しかしながら、今回皆様にこれほどまでのご支援を頂けたことを踏まえ、この度セカンドゴールとして、書籍出版費用の全額である166万円という金額を設定させていただきたく存じます。重ね重ねのお願いとなり恐縮ですが、ご支援頂ける方はどうぞよろしくお願いいたします。

幼い頃にテレビで見て衝撃を受けた海外の内戦による貧困、大学で工学系の講義を受けたときに感じた社会的な要因を深く考えることの大切さ、その後入った科学技術社会論という学際分野の研究室での調査活動、現在の仕事で日々感じる社会と技術の接点を考えることの難しさといった、これまでの経験の全てが、私がこのサイトに描いたような研究のモチベーションになっています。

大局的な観点を含む社会的な議論と細部を理解しなければならない技術の両面をつなぐことはとても難しく、二つの議論が拮抗するような場面を学会や実践活動などのいろいろな場面で見てきました。その二つを架橋することの難しさを日々感じており、その架橋は一朝一夕で終わるものではありません。この研究は、このクラウドファンディングを達成し、研究発表を行い、書籍を出版した後も時に工学的な、時には社会調査的な活動として続いていきます。これからのために、どうぞ引き続きお力添えをよろしくお願いいたします!

academist スタッフからの一言
AIは人の「生」を拡張するポテンシャルを秘めている

academist編集部

今日、インターネット上の至るところで目にする「この◯◯を見た人は、こんな◯◯も見ています」の広告。これは「レコメンド」と呼ばれるもので、AIが個々のユーザーの閲覧記録や検索記録のデータを大量に学習することで成り立っています。今や私たちは日々「次に何を選べば良いか」という意思決定の多くをAIにサポートされているのです。 しかし、AIがユーザーの本当に必要とするものをピンポイントかつ柔軟に提供する未来はまだまだ遠く、また、人がAIから提示されたレコメンドに対して「これは望むものではない」というフィードバックを返す仕組みもありません。 今回のプロジェクトは、AIが人の意思決定をより良くサポートするための調査と研究が目的です。人がより良い選択を行うために、AI技術はどうあるべきか。そして人はAIに対し、どのような態度で向き合うべきか―ー技術と哲学の垣根を超えるチャレンジを紹介します。

人はAIが弾き出した「レコメンド」を受け入れざるを得ない

動画サイトや通販サイトなどでよく目にするレコメンドは、AI(人工知能)が個々のユーザーの閲覧や検索の履歴からそのユーザーの関心の傾向を学習し、そこから「興味を惹きそうなもの」を予測して表示しています。実際、レコメンドされた選択肢から何かを選んだり、購入したりといった経験を持つ人も多いのではないでしょうか。

しかし、現状の仕組みでは、AIが提示したレコメンドに対して、ユーザーがリアルタイムに「これには関心がない」「もっとこういうものが欲しい」などというフィードバックができません。結果として、人はAIが弾き出した結果を一方的に受け取ることしかできず、AIをコントロールできない。今の両者は、このような非対称的な関係になってしまっているのです。

意思決定は、場合によって人の人生を大きく左右します。そしてAIは今後、人の重要な意思決定の場面にも関わるようになるでしょう。だからこそ、人の意思をよりAIに反映させる仕組みは非常に重要です。たとえば私は、地方移住を考える人々に対して、AIを用いて居住候補地をレコメンドする移住支援に携わっていました。試行錯誤を試みましたが、実際に使ったユーザーから「レコメンドが望む条件とズレている」というフィードバックをもらうことが多々ありました。住む場所を変えることは当人にとって大きな出来事です。だからこそ、こうした意思決定の場面において、人が積極的にAIにフィードバックできる仕組みを早急に整えなくてはならないと日々痛感しています。

人生を拡張するために、AIと人間の「批判可能」な関係を作る

意思決定をサポートする場面において、人の意志をAIにより反映させるには、私たちとAIがインタラクティブに関わり合うことが不可欠です。人がAIに対してフィードバックをする反面、AIがどのような学習からその結果を弾き出したのかを能動的に理解する―ーそうした「批判可能」な関係性を人とAIが築けるようになったら、AIによる意思決定サポートはより良いものになると考えています。少し大げさかもしれませんが、適切な選択肢を示して意思決定をサポートするということは、その人の選べる道を増やすということであり、それは人生や生き方の拡張につながるのではないか、と考えています。

このように、人とコンピュータの関わり方を考え、両者がよりよく共存できる在り方を探る研究領域をHCI(ヒューマン・コンピュータ・インタラクション)といいます。HCIが包括する範囲やアプローチは非常に幅広く、工学的な視点からインターフェースの研究や開発を行う研究者もいれば、社会調査を軸に据える研究者もいます。人間とコンピュータの両方を対象とする学問であるため、新しい技術に対しても、性能の良さだけでなく「人にどんな影響を与えるか」という観点が常に求められるのが特徴です。

HCI業界全体において、今、AIや機械学習といったテーマは非常にホットです。FacebookやGoogleなどの大手企業も力を入れて研究を進めています。彼らが特に関心を持っているのが、「ユーザーは与えられた情報がAIでフィルタリングされたものだと理解し、インタラクティブに働きかけようとしているか」―ーこれは、まさに私が今始めようとしている研究とほぼ同じで、日本でも知られているAIの説明可能性に関する研究のほかに、海外では”Algorithm Awareness”などのキーワードのもとに研究が進められています。

技術と哲学を横断し、「人」を見つめて研究をする

人とAIが互いに批判可能な関係を築くためには、技術の開発だけでなく、社会的にAIがどのようなものだと認識されているか、人間はAIをどのように経験しているのかといった技術哲学的な観点からの研究も非常に重要です。しかし現状、日本では工学と技術哲学を横断してHCI的な研究をする研究者はほとんどいません。多くの場合、技術者は自分たちが扱えるデータを基盤とした世界の中でいかに精度の高い優れた技術を生み出すかに関心を持ち、哲学研究者はマクロな観点から技術を議論しますが、細かな技術の話に踏み込むことはまれなのです。こうした両者の断絶が、「AIによる一方通行的な押しつけ」という環境を作り上げてしまっているのではないかと思います。

いかに優れた意思決定サポートの技術を開発したとしても、最終的な決定を下すのは人。だからこそ、AIを作る技術者は人間の方を向いて研究や開発をすべきだと考えています。そこで、その両方の領域を越境して研究に取り組もうと決めました。

私は中学生の頃から漠然と「世界から格差がなくなれば貧困は解決されるはずだ」と考えていました。高校生になってから情報社会のことを少し知るようになり、そのとき、「情報が的確に流通すれば、社会から格差や貧困がなくなるのではないか」と思い至ります。つまり、インターネット上に無数に存在する情報が、その情報を求めている人のところにピンポイントに届けられたら、小さな積み重ねでいつか格差を正すことができるのではないか。たとえば、身近な例だと、大学の進学候補や、奨学金の情報などがそうです。情報がうまく行き届かないことによる格差を、AIであれば埋めることができるのではないかと考えています。一つのレコメンドが、一人の人の人生を大きく変えるかもしれない。これこそがAIによる人の「生」の拡張です。

研究費サポートのお願い

今回のチャレンジで支援いただいた資金は、主に調査と出版のために使わせていただきます。この研究のメインとなるのは、インタビューと文献調査です。

ある技術をどのような方向性で発展させるかを決めるには、その技術を取り巻く社会環境や社会集団の持っている認識を調査する必要があります。そのため、技術哲学の領域で学際的な研究を進めている研究者だけでなく、一般の生活者や、AIを取り巻く倫理や法制度について考えている方々にもインタビューを行い、この社会でAI技術をどのようなものと捉えられているかを多面的に調べていくつもりです。AIに対してどのようなキーワードやコンセプトを持っているのか、それがAIに対する人々の態度につながります。

これらを調査することで、技術に対する認識がより具体的に浮かび上がってくるはずです。最終的には、新しい技術にさまざまな立場から関わる人が増えていく中で、社会の認識が技術発展の方向性にどのような影響を及ぼすのかについて、理論的なモデルが作れるのではないかと予想しています。

私はこの研究をアカデミアに閉じておくのではなく、より多くの人々に知ってもらいたいと思います。これは、これからを生きる私たち自身の話だからです。今回の研究を通じて得られた成果を非専門家向けの本としてまとめて出版し、「AIとの関わり方を考える」ことの裾野を広げようと考えています。HCI領域の研究者だけでなく、HCIがまだまだアカデミックに発展するポテンシャルがあるということを知らない研究者や、これからの世代を生きていくすべての人にも、この研究を届けたられたらと願っています。

挑戦者の自己紹介

中尾悠里

中尾悠里(なかおゆうり)と申します。富士通研究所という企業研究所で研究員をしております。元々、東京大学教養学部で科学技術と社会の接点に生じる問題を扱う科学技術社会論という分野の研究をしておりました。その後、実際に技術開発に携わりながら社会をよりよいものにしたいと思い、富士通研究所に入りました。入社後は社会調査やユーザー観察、ヒヤリングを通じて現場の課題解決を狙う技術開発を行い、主に都市部で暮らす移住希望者の方に移住先を選んでもらうためのインタラクティブ推薦システムを作ってきました。どの分野にいても一貫して情報技術が人間や社会にどのように影響を与え、人間や社会は技術をどのように受容するかに関心を持って研究を進めています。特に、技術が人間の意思決定に与える影響に興味を持ち、人間と人工知能の理想的なインタラクションを実現することで人間の生き方を拡張できる技術を目指して研究を行っています。

研究計画

時期 計画
2020年1月 クラウドファンディング挑戦開始
2020年11月 学会発表(科学技術社会論学会)
2020年12月 書籍出版

リターンの説明

リターンの金額に加え、追加支援をすることができます。追加支援分には消費税がかかりません。
1,100 円 (税込)
注目のリターン : 研究報告レポート(PDF版)

研究の詳細な進捗などをレポートにまとめてお送りします。応援よろしくお願いいたします!

リターン内容

研究報告レポート(PDF版)

43人のサポーターが支援しています (数量制限なし)

5,500 円 (税込)
注目のリターン : オススメ文献リスト(PDF版)

今後のAIと社会を考える上で是非押さえておきたい書籍のリストを、解説を付けてまとめてお送りします。AIの普及した社会で生きるためには技術の話、社会の話もどちらも押さえておく必要があります。技術・社会を両面から考えるための書籍をご紹介します!

リターン内容

オススメ文献リスト(PDF版) / 研究報告レポート(PDF版)

66人のサポーターが支援しています (数量制限なし)

11,000 円 (税込)
注目のリターン : 学会発表資料の謝辞にお名前掲載

また、2020年の科学技術社会論学会にて本研究に関する発表をする際、謝辞にお名前を掲載させていただきます。また、発表資料(電子版)を送付いたします。お力をお貸しください。応援よろしくお願いいたします! ※学会発表が叶わなかった場合、その後の学会発表資料の謝辞にお名前を掲載いたします。

リターン内容

学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / オススメ文献リスト(PDF版) / 研究報告レポート(PDF版)

29人のサポーターが支援しています (数量制限なし)

33,000 円 (税込)
注目のリターン : 書籍の贈呈・出版書籍謝辞にお名前掲載

本研究成果に関する書籍を出版する際の謝辞にお名前を掲載させていただきます。また、その書籍を贈呈致します。※本研究は結果を書籍としてまとめることを最終的な目標としており、その達成に尽力いたしますが、書籍出版がかなわない場合もございます。その場合は、その後の論文発表等でお名前を記載させて頂きます。何卒よろしくお願いいたします。

リターン内容

書籍の贈呈・出版書籍謝辞にお名前掲載 / 学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / オススメ文献リスト(PDF版) / 研究報告レポート(PDF版)

13人のサポーターが支援しています (限定 85 個)

55,000 円 (税込)
注目のリターン : サイエンスカフェ参加権

サイエンスカフェにご招待いたします。研究の背景やこれまでの研究内容について詳しくお話しさせていただき、みなさまとディスカッションの機会を設けさせていただきます!ご支援を何卒宜しくお願いいたします!※東京都内又は神奈川県にて開催いたします。当日お越しいただけない方には、資料を送付いたします。また現地までの交通費はご負担をお願いいたします。

リターン内容

サイエンスカフェ参加権 / 書籍の贈呈・出版書籍謝辞にお名前掲載 / 学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / オススメ文献リスト(PDF版) / 研究報告レポート(PDF版)

3人のサポーターが支援しています (限定 20 個)

110,000 円 (税込)
注目のリターン : 個別相談

Skypeなどのビデオ通話にてなんでもご相談にのらせていただきます。本研究の詳細に関するご質問をはじめとして、人文社会系の分野を出身としながらもAIとHCIの分野で研究活動を行っている経験を活かし、一般的な経験談、研究のご相談、キャリアについてのご相談、英文校正のお手伝い他、お答えできる内容は全て答えさせていただきます! ※ビデオ通話時間の目安:合計90分程度(小分けにしてもOKです)

リターン内容

個別相談 / サイエンスカフェ参加権 / 書籍の贈呈・出版書籍謝辞にお名前掲載 / 学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / オススメ文献リスト(PDF版) / 研究報告レポート(PDF版)

1人のサポーターが支援しています (限定 8 個)

220,000 円 (税込)
注目のリターン : 出張講演

講演会に出張いたします。AIと人間の協調や今後のAI研究について講演させていただきます。ご要望を伺ってそれにお応えする形の講演も可能です!過去に行った講演活動:「中高生を対象としたこれからのAI社会の生き方について」、「語学系の大学の方を対象とした文系のためのAI理解について」、「一般の方を対象としたAIの歴史とこれからの社会についての概説」、「JST主催のパネルディスカッション、サイエンスアゴラ市民会議への登壇・議論」、「米国スタンフォード大での社会問題を解決するためのAI利用について(英語)」 ※旅費・宿泊費等は別途頂戴する可能性がございますのでご留意ください。

リターン内容

出張講演 / 個別相談 / サイエンスカフェ参加権 / 書籍の贈呈・出版書籍謝辞にお名前掲載 / 学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / オススメ文献リスト(PDF版) / 研究報告レポート(PDF版)

1人のサポーターが支援しています (限定 5 個)

このプロジェクトは、 2020年01月15日(水) 10時00分 から 2020年03月16日(月) 19時00分 までの間に目標金額830,000円を達成した場合のみ、決済が確定します。
お支払について
お支払にはクレジットカード(VISA, Mastercard)、銀行振込、コンビニ決済、Pay-easy、PayPalをご利用頂けます。
追加支援について
リターンの金額に加え、追加支援をすることができます。追加支援分には消費税がかかりません。
セキュリティについて

当サイトは SSL 暗号化通信に対応しております。入力した情報は安全に送信されます。

1,100 円(税込)

研究報告レポート(PDF版)

43 人 が支援しています。
(数量制限なし)

5,500 円(税込)

オススメ文献リスト(PDF版)

66 人 が支援しています。
(数量制限なし)

11,000 円(税込)

学会発表資料の謝辞にお名前掲載

29 人 が支援しています。
(数量制限なし)

33,000 円(税込)

書籍の贈呈・出版書籍謝辞にお名前掲載

13 人 が支援しています。
(限定 85 個)

55,000 円(税込)

サイエンスカフェ参加権

3 人 が支援しています。
(限定 20 個)

110,000 円(税込)

個別相談

1 人 が支援しています。
(限定 8 個)

220,000 円(税込)

出張講演

1 人 が支援しています。
(限定 5 個)

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