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高エネルギーレーザーの新しい理論を確立したい!

谷 水城

東京大学、博士後期課程

Challenge period

2021-03-31 - 2024-03-31

Final progress report

Tue, 23 Nov 2021 19:58:04 +0900

Progresses

6 times

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7 people

Elapsed time

Wed, 31 Mar 2021 10:00:00 +0900

Comment from academist staff
光・電子・原子それぞれの相互作用を考え、異なる階層間の有機的融合に挑戦

博士前期課程では、月額支援型のクラウドファンディングプロジェクト「電子のアト秒の世界にコンピュータシミュレーションで迫る!」に挑戦し、高エネルギーレーザーに関する理論研究に取り組んできた谷さん。博士後期課程へ進学後は、より高い視座から研究を展開し、高エネルギーレーザーが物質中に作り出すダイナミックスの理解を深めていきたいと意気込みます。そのために必要なのが、既存の階層間の断絶を埋めることです。電子だけ、原子だけ、光だけの振る舞いを完璧に知ることが仮にできたとしても、これらが互いに影響を及ぼしあうときに何が起きるのかは非自明なためです。谷さんは、それぞれの相互作用を取り入れ、異なる階層間の理論を有機的に融合させることを目指します!

高エネルギーレーザーの可能性と、いまだ残されている謎

子どものころ、よく晴れた日にルーペで落ち葉や紙を燃やして遊んだことはありませんか? 白い紙とかプラスチックだとなかなか簡単にはいかないですよね。大雑把に言って、この光を集めるという行為を突き詰めたものが、レーザー光です。

100年ほど前、彼のアインシュタインが理論的基礎を築き、ベル研でレーザーが発明されたのは今から60年くらい前のことです。レーザーを利用した多くの技術が私たちの生活を支えており、これからも未来を切り開いて行くでしょう。採血不要の血糖値測定、インフラの高速診断、核融合や加速器などのファシリティ、建造資材のピーニング、各種犯罪捜査、透明マントなどの3D微細構造形成など、裾野は広大です。

そして、30〜40年前にはムルやストリックランドによってレーザーを時空間的に圧縮する方法=チャープパルス増幅法が発明され、ルーペで集めた太陽光の数兆倍以上の非常に高いエネルギー密度のレーザー光が安定して得られるようになりました。以来、高強度場科学が瞬く間に隆盛し、現在もその勢いはとどまるところを知りません。

一点集中で非常に多くのエネルギーを物質に注入して、局所的な化学・構造変化を誘起したり、特異的な電磁応答を駆動したり、原子を吹き飛ばしたりできる高エネルギーレーザーは、スマホやPCの電子回路プリント基盤をナノレベルに細かく作り込むEUVリソグラフィや、アト秒(100京分の1秒)スケールの超高速シャッターを持つ究極のカメラなど、従来のレーザー技術を超える最新の極限的技術へ展開されつつあります。

しかし、高エネルギーレーザーが物質にどのような作用を及ぼし、どんなダイナミックスを駆動するのか、まだ良くわかっていない部分も多く残されています。未来の技術を実現していくためにも、まずは詳しいことをもっと知る必要があります。

万物の挙動を知るためには「複雑系」の考え方が必要

万物の源は何か? その問いは、古代より数多の人々を惹きつけ、いまもなお果敢に挑戦されています。この問いがなければ、現代の私たちのバラエティ豊かな生活はもたらされなかったかもしれません。しかし残念なことに、構成要素単独の性質を知ることができても、構成要素間の相互作用の存在が構成要素の集団全体の挙動の予測の困難をもたらすことが、前世紀くらいからさまざまな分野で認識されるようになってきました。万物の源について知ったとしても、万物の挙動を知った状態からは程遠いという、いわゆる複雑系の考え方です。

たとえば、物理学における強相関電子系、化学における鏡像異性体、心理学における傍観者効果などはいずれも構成要素の単なる寄せ集め以上の「1+1=10」を体現するものと言って良いでしょう。もっと卑近なものだと、ボードゲームのオセロなんかもそうです。ルールは簡単ですが、「オセロのルールはわかるという状態」と「オセロの局面に応じた最適戦略を知った状態」とは程遠いことを私たちは知っています。

17〜18世紀にかけて活躍したニュートンに端を発する近代の科学的方法論に立脚し、さまざまな運動の基本法則を詳らかにしてきた物理学においても、複雑系の考え方は浸透しています。アンダーソンの”more is different”が言っているように、構成要素間の相互作用が思いもよらぬ集団現象を創発すること、それゆえ構成要素の時空間スケールに応じた理論が必要であるという、いわゆる階層性の考え方が共通理解となっています。

高エネルギーレーザーが物質中に作り出すダイナミックスの理解を進めるには、既存の階層間の断絶を埋める必要があると私は考えています。”異なる”スケールの構成要素間の相互作用が本質的になる場合には、異なる階層の理論を有機的につなぎ合わせる必要があるのです。

最新技術を駆使して、異なる階層間の有機的融合に挑戦

どのようにつなぎ合わせるのかは、最終的に挙動を理解したい集団が何であるかに応じてさまざまですが、高エネルギーレーザーが物質中に作り出すダイナミックスに関して言えば、少なくとも、運動の時空間スケールの異なる電子・原子(=物質の構成要素)そして光子場(=高エネルギーレーザーの構成要素)のダイナミックスを組み合わせて考える必要があるでしょう。

理解がなかなか進んで来なかった背景には、計算コストという問題も潜んでいます。大抵の場合、非線形・非平衡・開放系という3拍子が揃っているために手計算では到底手に負えません。そこのところを、極力計算コストの低いシミュレーションスキームを開発したり、スパコン「富岳」に代表されるような高性能コンピューティング技術を駆使したりすることによって、解決します。

世界は複雑システムで溢れかえっています。電子だけ、原子だけ、光だけの振る舞いを完璧に知ることが仮にできたとしても、これらが互いに影響を及ぼしあうときに何が起きるのかはまったく非自明です。最新のコンピュータテクノロジーを駆使しつつ、光と電子、電子と原子、原子と光、それぞれの相互作用を可能な限り取り入れることで階層間の有機的融合に挑戦します。

Why we need your support

博士前期課程までは主に、高エネルギーレーザーに対する物質の超高速応答である高次高調波発生のメカニズムに関する理論研究に取り組んできました(参考:「電子のアト秒の世界にコンピュータシミュレーションで迫る!」)。ひとつの電子だけ見つめていればいろいろなことがわかってしまう、ある意味シンプルな現象、言うなれば階層内である程度閉じる現象を研究対象にしてきたということになります。

博士後期課程ではこれを発展的に継承し、もう少し高い視座に立って研究を進めます。前節まででご紹介したような、複数階層に跨るマルチスケールな現象の理解に取り組んでいきたいと考えています。

研究を進めるなかで、行き詰ることがよくあります。博士前期課程では、このファンクラブを通じた多くの方の支えのおかげで、一定の成果を収めることができました。また、毎月の活動報告を通じて、大学院という閉じた空間で淡々と日々を送っているだけなら気づかなかったであろう発見をはっきりと認識できたり、異なった視点から自分の研究活動を眺め直したりすることに繋がりました。

フォームを設置して要望や感想を送っていただくスタイルにしているので、そこで多くの励ましの言葉を投げかけていただき、ときには自分が気づいていないような強みを見つけてもらえることもあって、心の支えになっています。

毎月の活動報告では、研究の進捗や国内外出張紀行から最近思ったことまで気ままに書いています。研究がどんな感じで進められるのか、何が問題になっているか、大学院生は何を考えどんな生活を送っているのかなどを垣間見ることができます。

研究内容・手法・その応用や考えていることに興味を持たれた方や共感された方など、私の博士後期課程生活を見守っていただける方のご参加をお待ちしています! ぜひ一緒に階層の有機的融合にチャレンジしてみませんか?

Profile

谷 水城

奈良生まれ京都育ち、現在は東京大学博士後期課程・卓越RA・関西光科学研究所実習生。これまで、外部共振器型狭線幅半導体レーザーの開発研究、光学系の数値設計、電子線後方散乱回折を用いた結晶粒イメージング、固体高次高調波発生機構に関する理論的研究電子輸送の半古典シミュレータの開発研究など、実験からスパコンを用いたシミュレーションまでいろいろかじってきました。料理はほぼ毎日します。
ORCIDページはこちら

Project timeline

Date Plans
2021年04月 博士後期課程進学
2021年05月 国際会議で口頭発表(予定)
2021年07月 国際会議で口頭発表(目標)
2021年7月~2023年7月 この間に論文2〜3本投稿(目標)
2023年07月 予備審査(予定)
2024年03月 博士後期課程修了(予定)

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本サイト上の私のページで活動報告欄を限定公開し、研究の進捗や国内外出張紀行から最近思ったことまで気ままに書いています。研究がどんな感じで進められるのか、何が問題になっているか、大学院生は何を考えどんな生活を送っているのかなどを垣間見ることができます。報告頻度や報告内容については支援者のみなさまの感想なども交えてアップデートしたいと思っています。また、本研究に関する論文が掲載される際、謝辞にお名前を記載させていただきます。希望されない方がいらっしゃいましたら、academistまでご連絡ください。

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